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2004.12.31

シティバンクの処分に思うこと

 シティバンクの富裕層業務撤退となった事件のことが、30日の日経に出ていました。年末でもあり、いま思うことを書いておこうと思います。

 これだけマスコミが騒いでいるのに、シティの顧客から苦情や損害賠償請求が出たという話を聞かないのはなぜなのか。事件発覚当時、日テレのニュース番組で元シティバンク勤務という人がインタビューに答えていうには、1億を預かって2千万の収益を上げたが、シティが顧客に1千万の収益だったと嘘をついて1千万をシティが不当に儲けている。顧客は投資した本当の結果などわからず、自分がだまされたとは気づいていない。

 しかし、この説明にも納得できない。顧客をだまして収益を上げたのなら、不当利得でその収益は顧客に返さなければならない。シティバンクが受けた行政処分に「富裕層業務撤退」とはあるが、不当利得の返還または罰金などの処分が下されたとの報道を見ていない。騙された人が気づいていないからといって、犯罪者の不当利得を、返還する能力があるにもかかわらず返還させないのであればその処分は片手落ちである。

 30日の日経では、シティバンクの違反行為を次のように書いている「銀行法が禁じる証券や保険、不動産、美術品への投資の仲介。不正な資金洗浄(マネーロンダリング)に手を染めた疑いのある人物の口座開設。ずさんな顧客情報の管理。誤解をまねく勧誘手法・・・・・。」他にもまだまだ違反行為はあるようだが、顧客を騙したという詐欺ははいっていない。

 顧客を騙していたのなら真っ先に報道されてしかるべきだが、多分、シティの違法行為に詐欺は入っていないのだろう。マネーロンダリングも大変な犯罪だが、顧客情報の管理はもちろん、顧客への詐欺などは金融機関としてあってはならないことだ。それに比べれば、銀行法違反はまだ軽い犯罪といえる。銀行のワンストップオペレーションが進み、銀行の窓口では保険は扱っているし、株式・社債といった証券も扱えるようになっている。業界の軋轢はあろうが、この方向は基本的には進んでいくだろう。不動産についても、REITは別にしても、邦銀は関連会社を使って実質的には投資対象としているといっても差し支えない。美術品にしても信託業法の改正で、投資対象としても不思議はないし、それどころか、映画やアニメーションだって投資対象にできる。業法違反は先走っただけで、見方を変えれば法が実態についてきていないだけだといえる。そう考えると、シティの違法行為の本質はマネーロンダリングと顧客情報のずさんな管理、そしてそういった体制を生むガバナンスであったといえる。

 さて、シティの顧客から苦情も損害賠償請求もないという疑問にもどるが、シティが詐欺で顧客を騙していないのなら、そういったことはなくて当然である。さらに、少々うがった見方を加えるなら、シティの顧客、特に富裕層業務の顧客は実際に普通に投資をしていて、損失は出ていないのだろうと思う。シティが詐欺をしていなくとも、シティを通して投資をして損失が出ていればダメもとでも訴訟の1件くらいは起きるのが普通なのでないか。それがないということは、損が出ていないか、顧客自身が違法と認識してシティと共謀して違法な投資をした場合だと考えるが、後者は少々考えにくい。やはり、シティの顧客は損を出していないと考えるのが自然であろう。

 そうすると、収益至上主義で違法行為までやって儲けを出しながらも、顧客には誠実に対応するシティバンクの担当者像が浮かぶのだが、どうだろうか。そして、シティの富裕層業務は腕がいいといえると思うのである。もちろん、腕がいいから処分が軽くなるわけではない。それは十分承知の上で言いたいのだが、シティのプライベートバンキング(PB)業務撤退は、今後の日本のPB業務の損失であった。

 そういって、嘆いていてもしょうがない。なぜ、シティは好調なパフォーマンスを上げられたのか、これを検証しておくことは必要だろうと思っている。この検証によって、日本におけるPB業務がより良いものになるはずだと思うからである。銀行法に違反して多様な対象に投資したから好パフォーマンスだったのか、マネーロンダリングにより大口の汚いカネを集めて多額の運用を行ったからか、収益至上主義のガバナンスが実はパフォーマンスには良かったのか、いろいろな可能性はある。だが、その可能性を検証する情報が今はまだ乏しい。個人的には、多様な投資対象が好パフォーマンスの原因で、今後日本の金融界もますますワンストップオペレーションが進むと思いたいが、今は結論づけられる状況にはない。

 来年は、シティなき後の邦銀の戦略、シティの巻き返し策、シティに代わる外銀の動向をウォッチしながらこの課題への答えを探してみたい。
 

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Tracked on 2005.05.25 at 17:58

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