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2005.03.18

会社を「所有」するということは。

 株式会社は誰のものなのか。最近よく聞くようになったフレーズです。なんとなく考えてみました。株式会社は誰のものなのでしょうか。

 会社は株主のものだと言われるようになりました。商法的には昔からそうなのですが、率直には納得できません。例えば、今問題のコクドという会社は、株主の約半分が誰だかわからなくなっても、銀行主導の経営改革委員会がイニシアティブをとって改革を進めています。株主が堤家の誰かなのか、株主名簿の名前は実在するのかなど、会社が株主のものだと言う人はこの現象をどう説明するのでしょうか。
 私が思うには、会社の所有者というべき人を探すには、まずはバランスシート(貸借対照表)を見ることかなと思います。左側の借方には資産が出ています。会社はこの資産を使って活動をして利益を生み出しています。そしてこれを支えているのが、貸方の負債と資本です。帳簿上は負債があっても実質上無借金会社なら、つまりは負債がゼロならその会社は株主のものと言えないこともないのかなと考えます。コクドは、銀行借り入れで不動産を買っています。資産に不動産が計上されて、負債に借り入れが計上されます。バブル崩壊後不動産価格が下がって資産は実質上小さくなっても、他に西武鉄道株がそれを補って余りあったから債務超過にならず健全な経営を保ってきたのでしょう。ところが、西武鉄道株が上場廃止となって価値が大幅に下がってしまいます。そうすると、不動産も含み損を抱えていますから、資産は大きく縮小して実質債務超過、つまり資本がマイナスとなったようです。資本がマイナスの企業が株主のものだとは言えません。負債に計上されている借入金の出所である銀行がイニシアティブを取るのは当然です。

 債務超過でない健全な企業であっても、会社は株主のもの、あるいは株主だけのもののように言われると違和感を覚えます。というのは、バランスシートに計上される資産が会社の全部を表している訳ではないからです。通常、M&Aが行われるときに買収される企業の価値の査定に帳簿に出てこない営業権、いわゆるのれん代が加味されます。営業権などはバランスシートに計上されていなくても株価に反映されているのかもしれませんが、会社の重要な資産で計上されていないものがまだあります。それは「ヒト」、人財とでもいうのでしょうか。経営者や従業員です。もし、人間が必要ない機械だけで生産と販売をして利益を上げる会社があれば、ヒトという資産を考慮する必要はないのでしょうが、そうでなければ、ほとんどの会社はそうだと思いますが、ヒトを無視して株主だけのために経営はできないでしょう。

 優れた経営者や優れた人材のいる会社の株価は、そうでない会社の株価より高くなっていて折込済みではないかと思われる方もいるかもしれません。でもそれはヒトの能力を市場が評価して株価に織り込んだだけで、ヒトそのものを株価に織り込んではいませんしできません。会社は株主のものと言っても、会社の全てが株主のためにあるとは限りません。

 これは、会社は誰のものかということではなく、株主のものとはいっても会社の所有は「パソコンを所有する」などというときの所有とは意味合いが異なるということです。所有権は絶対な権利だと思ってしまうと、これは間違いになります。昔の封建領主は今日的な意味で領地を所有はしていません。世俗的な権限は領主にあっても、それが全てではなく、宗教的には教会が権限を持つこともありました。日本でも戦国時代には、領主の権限と寺社の権限、足利将軍の権威や天皇の権威などが錯綜していて、今日的な所有権で全てを説明することは不可能です。

 現代は封建時代とは違ってはいますが、近代的所有権の概念が当てはまらないことがあります。昨年末に業法が改正されて今後その使い道の拡大が期待される信託は、近代的な所有権概念とは相容れない面が多分にあります。所有権は受託者が持っていても、それは受益者のために行使しなければならず、このとき信託財産は受託者のものとはとても言うことはできません。

 こうして見ると、会社は誰のものかと聞かれても簡単には答えられません。債権者や株主、役員や従業員、取引先や世間一般がそれぞれの立場で自らの利益を追求しながら主張しあう中から、それぞれの会社ごとに影響力の大きさが決まってくるようです。もちろん、その影響力も時間とともに変化もするでしょう。そして、影響力の大きさ比べにおいて何よりも必要なのは、「公正さ」と「平等」のルールと自制心です。この両者に疑いのある行為は、市場から排除して、さらに違反が明らかになれば行為者自身を排除する必要があります。それぞれの立場で公正な主張をする行為者が、会社を持つにふさわしい人なのだろうと思います。

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