« ODAは金額よりもノウハウ | Main | お山の大将 »

2005.04.26

資源確保と経済性

 国内が中国の反日問題に釘付けとなっていた4月21日に、国益を守るためにロシアのフリステンコ産業エネルギー相と激論を交わしていた中川経産相を評価したいと思います。ひところの支持率からは半分近く下がったとはいえ、小泉内閣には町村外相に中川経産相と、はっきりとものを言う大臣を揃えていることはいいことです。

 ロシアの大臣との激論の中味ですが、シベリアの石油パイプラインについてのことです。西バイカルで産出する石油を日本が輸入するために、パイプラインを太平洋沿岸地域まで引くことで話を進めていたのが、パイプラインの途中で中国へも供給できるよう支線を引くという話が中国とロシアで進められています。中川経産相は、中国への支線を優先するなら資金協力はしないという姿勢をフリステンコ氏へ示したということです。

 このパイプラインの概要は、東シベリア地域の石油パイプライン網(計画案)というサイトにわかりやすい地図が出ています。この地図にある第一段階敷設というパイプラインを作ってしまえば、スコボロディーノというところからはすぐ南が中国で、中国内のパイプラインは当然中国が作りますから、ロシアとしてはパイプラインが短くて済み、安上がりで石油の輸出ができます。「中国が近いから先に作って、その後で日本用に第二段階敷設も作りましょう」というのがロシアの見解のようですが、油田の埋蔵量から中国と日本の両方へ供給できるほどはないということなので、中国向けの支線を作れば日本に石油が来る可能性はかなり低くなるようです。

 本当に供給されるかどうかわからないパイプラインのための資金協力は無駄ですから、中川大臣の主張は極めて正当なものです。ここで、ロシアと中国はけしからんと思いがちになりますが、決してそうともいえません。需要は日本にも中国にもありますから、ロシアとしてはどちらに売っても売れれば一緒です。ロシアも中国も民主主義国家とは言い難い国ですから、日本を敢えて支援する必然性は持たないのでしょう。そうすると、売りやすいほうということになります。太平洋までパイプラインを引くよりも、その半分程度で済むなら、設備投資が約半分で済んで売り上げはどちらも同じくらい。それなら安く上がるほうという選択をするのかもしれません。

 同じ日経新聞でしたが、もうひとつ石油絡みの記事に目が留まりました。非常に小さな記事で、日経のサイトに出ていないようなので直接引用します。

タイ、油送管建設計画を凍結  [バンコク支局] タイ政府は南部マレー半島を東西に横断する石油パイプライン「ランドブリッジ」建設の凍結を決めた。消費国の日中韓やオマーンなどの湾岸産油国と共同で、マラッカ海峡を経由しない全長240kmのパイプラインを建設する計画だったが「シベリアルートに関心を示す中国の参加が望み薄となった」(国営石油会社PTTのプラサート社長)。日韓も正式回答を留保しており、事業化のめどが立っていない。

 記事にある「ランドブリッジ」とは、タイが東アジアのエネルギー基地になろうという、ある意味途方もない計画で、頓挫してしまうのも仕方なのかもしれません。でも、先般のマラッカ海峡の海賊に見られるように、また海賊に限らずこの海峡の物理的な許容量も含めて非常にリスクが高くなっていることを踏まえれば、中東からの石油がマラッカ海峡を通らないルートを確保することは重要であり必要なことです。タイが中東から一定量を運んで備蓄してくれれば、日本から中東まで行かなくでも石油が調達できます。もちろん全てがタイを経由する必要はないのであって、あくまでもリスク分散です。

 リスク分散ということでいうなら、ベストはシベリアからの石油の供給路を確保して調達先の分散を図ることですが、それが叶わなければ中東からの調達の安全性を高めることはその次に重要です。中国、韓国がのって来ないのであれば、日本単独でもタイのランドブリッジに援助あるいは投資をしていいのではないかと考えます。このまま、萎んでしまってはいかにももったいない気がします。タイの石油パイプラインについては、福井 孝敏氏という方が書いているこのサイトにかなり詳しく出ています。

 中国とは資源をめぐって争う関係にありますが、真っ当な競争をして、結果的に東アジアにとって、できれば世界全体にとっていい影響が出ることが望ましいと思います。日本の国益に反することなく、日本の省エネ技術を中国に買ってもらう方法があったら、中国の公害問題にとってプラスですし、環境面でも世界的に望ましいはずなのですが、なかなか難しいものがあるのでしょうね。

                    

|

« ODAは金額よりもノウハウ | Main | お山の大将 »

Comments

 貴重な情報提供を感謝しながら読ませていただきました。中国への資源供与の問題は、北京のオリンピック後の大問題になるのでしょうか?北朝鮮のビッグサイズなのが出現するとか。
 それへの対応策が、ロシア人との商談とは、お寒い状況だと思う。中国人とロシア人の商談なんて、山賊と海賊の取引みたいな印象で見ています。

Posted by: 罵愚 | 2005.04.26 at 11:39

罵愚さん、コメントありがとうございます。
中国で戦争や内戦がない限り、経済成長に伴って資源が必要になることは確かだと思います。ただ、今の中国は公害垂れ流しで環境にも良くないことも確かです。資源を効率的に使う方法は、まだまだ日本のほうが優れていますから、日本が中国に優先して資源を使ったほうが世界のためという考えもできますが、とても受け入れられないでしょう。そうすると、日本の技術を中国に移していかざるをえないのでしょうけれど、反日教育をしている国のリスクがよくわかりましたから、日本企業は投資を縮小することも考えるかもしれません。なかなかうまくいかないようです。

Posted by: tomorin | 2005.04.26 at 18:41

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/64797/3847511

Listed below are links to weblogs that reference 資源確保と経済性:

« ODAは金額よりもノウハウ | Main | お山の大将 »