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2005.04.13

安易な常任理事国入りへの疑問

 4/12の日経社説 は安保理拡大を求める内容ですが、極めて安易な論調だと思います。恐らく、日経に限らず、どこの新聞社もというより多くの日本人が、今回のアナン事務総長の国連改革案を検討もせずに受け入れてしまっているように見えます。我国の常任理事国入りという1点のみしか見ていないためでしょうか。 

 今回の安保理改革案は、国連改革という大きなプラン の一部分です。日本が安保理の常任理事国になれるかもしれないという事だけで、大きなプランを見なくていいものではないはずです。アナン事務総長は、

安全保障理事会の改革などを含めた改革プランを一括して、9月に開かれる加盟国首脳会議で採択するよう要請

しています。国連改革は安保理改革だけではないのです。そしてアナン氏は一部だけではなく、改革プランの全部を実現するよう求めています。 

 アナン氏の改革案は、「貧困からの自由」と題してODAの増額、「恐怖からの自由」として安保理拡大と同時に自衛権の制限、「尊厳ある生活への自由」として人権理事会の新設を提案しています。3つの「自由」はどれももっともだと思えそうですが、そもそも国連への貢献の割りに発言力が弱いことから日本の常任理事国入りを推進しているのが、さらに資金面での負担を求められることになります。それも、ODA予算は現状でGNP比0.2%を0.7%へと倍以上への増額を求められるのです。国連の予算の19%は日本の資金で賄われています。最も多くの資金を提供しているのはアメリカで、22%に及びます。ただ、経済規模で見ればアメリカは日本の倍以上ありますから、アナン氏のプランのODA増額のようなGNP比でいえば日本が最も大きな資金提供をしているともいえます。国連改革は何のために必要かといえば、国連のイラクでの石油食糧交換計画に見られるような不正などで、提供した資金が効率的に使われていないのではないかという疑問であり、改革の中味はこれに応えるものでなければ意味がありません。援助が必要であるならその資金をケチることはないのですが、現状を省みずに経済規模だけで一律に負担を求めても、最も大きな資金提供国である日米に不信感があるやり方では継続性のある改革にはなりえません。 

 自衛権の制限とは、差し迫ってはいない「潜在的な脅威」への武力行使を安保理に委ねるというものです。イラクへの武力攻撃の反省からこのような改革案になったのでしょうが、日本にとって一番の脅威である北朝鮮への対抗策としてどれだけ有効でしょうか。仮に日本が安保理常任理事国入りしたとしても、具体的に日本を守ることで信頼できるのは、国連憲章よりは日米安保条約ではないでしょうか。北朝鮮でミサイル発射の兆候があったときに安保理は速やかに先制攻撃へのゴウサインを出してくれるとは到底思えません。中国が拒否権を発動すれば安保理は機能しないのと一緒です。もしこれを「差し迫った脅威」として安保理の了解なしに自衛権の行使が行われたときに、今回のイラクにおけるアメリカのように非難される可能性が大きいように思います。常任理事国であることで、「差し迫った」有事の際の決断に支障が出ることも心配です。常任理事国であることが、脅威への対応の足枷にでもなったら取り返しのつかないことになります。日本にとっての国連改革は、日本の脅威を取り除くのに有効な組織にしていくことです。そうすれば、途上国に必要な資金も気持ちよく提供できるというものです。大体、主権国家の安全保障について、一部であってもその権限を制約するようなことができるわけがありません。

 アナン氏の改革案で、唯一評価できるのは人権理事会の新設でしょう。現在ある国連人権委員会を改変するというものです。この国連人権委員会には、独裁国家のキューバや、国内の暴動を日本のせいだといって憚らない中国などが入っています。こんな組織が人権を名乗っているのですから、作り直す必要のあることは当然といえます。

 こうしてみてみると、アナン氏の改革案はどれだけ有意義なものなのかといえば、甚だ疑問を持たざるを得ません。常任理事国入りという1点のために、その他の不備を黙認するにはあまりにも大きな不備となのではないかと思います。もし、国連での存在感を高め、この国際組織を有効に使っていこうというのであれば、日本が独自の改革案を作り上げるくらいのことがあっていいのではないでしょうか。いずれにしても木を見て森を見ずという誤りは犯して欲しくないものです。

                                    

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Comments

日本が国連で何ができるのか、真剣に考えたことがないのではないか? 国民の中にも、「日本は米国に追従するだけで、米国票が一票増えるだけだ」とか、「日本の独自性を発揮できるのか」との疑問も多い。
 政府も常任理事国入りを目指すとしているが、何のためか、そして何をしたいのか、明確な説明がない。世論も惰性で賛成しているだけに見える。
 国民も、今回の騒動を通して、もっと真剣に考える必要があるのではないだろうか?

Posted by: ko-bar-ber | 2005.04.13 at 21:32

常任理事国になってどんな点が国益にプラスなのか具体的に説明できる政治家や役人はいないと思います。すぐに国益に結びつかなくても、常任理事国になって国連を改革できるほどの影響力をもてるのならまだ解ります。その辺が曖昧で、常任理事国になること自体が目的だとしたら、なった後どうなるのという疑問は当たり前のことです。なった後のプラスとマイナスをよく検討しないと、なった後に後悔することになるかもしれません。

Posted by: tomorin | 2005.04.14 at 18:13

 はじめましてっ
 T/B&コメントありがとうございます。(反応が遅れてしまい申し訳ないです ^^;)

 僕も同感です。

 もちろん、各加盟国同様、国連事務総長についても、それぞれの思惑で動いているのであり、先に立つのは自らの利不利の判断であることは当然でしょうけれども、たしかに事務総長のプランには、いつになく ^^;)、「日本の利用」ということが非常に目立ちますね。

 日本政府の様子からすると、そうした国連側の思惑に気づいていないというよりは、重々承知の上で、しかしとにかくまずは何よりも常任理入りというところと見えます。
 僕自身の記事で「錦の御旗」化と表現しているところです。

 しかしながら、ここまで運動してくれば、最早軌道修正は難しいですね。あり得るとすれば、目算が失敗に終わり、常任理入りが叶わなかった場合ですが、ダメだったから方針転換ということも残念なところです。(自発的転換とはとらえられにくいだろうので)

 お互い、さらにしばらく様子を見守ってまいりましょう。

 今後とも、よろしくお願いします。

Posted by: Shu UETA | 2005.04.18 at 18:28

Shuさん、コメントありがとうございます。
Shuさんがおっしゃるように、常任理事国入りという「錦の御旗」は降ろすことができなくなってしまっているようですね。
中韓の「外圧」を利用するという方法もあるかなと思っていたのですが、中国の暴動でそれも無理のようです。とりあえずは見守るほかはなさそうですね。

Posted by: tomorin | 2005.04.18 at 22:16

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『読売新聞(05/04/12)』 安保理拡大-厳しい現実をどうはね返すか  国連総会で、安全保障理事会の拡大問題について、安保理の常任理事国である米国、中国、ロシアは、早期実現に極めて消極的な見解を表明した。  常任理事国入りを目指す日本にとっては、逆風と言える動きだ。拡大への流れを停滞させず、加速化するために、局面の打開に全力をあげねばならない。  米国代表は、「期限を設けず、幅広い合意に基づいて進めたい」と述べた。中国も、期限設定に反対し、「総意による決定」を求めた。ロシアも同調した... [Read More]

Tracked on 2005.04.13 at 21:31

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