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2005.05.26

トップの責任ー天皇

 25日の日経の「春秋」に、新生銀行の八城政基会長兼社長の著述が引用されていました。

日本企業では、いろいろ問題が起きたときに、『会社側は知りませんでした』とか、『下の者がやりました』とか、『会社のトップは全く知らなかった』と釈明するケースがありますが、米国の会社ではそうはいきません

 これは、橋梁工事業者の談合を批判するための引用ですが、トップが責任を取らない体質というのは、他でも目にすることだと感じます。トップが責任を取らないというより、周りが責任を取らせないのかもしれませんが、最近そのことを強く感じたのは、4月の衆参の憲法調査委員会の報告が出たときでした。

 憲法改正には基本的に賛成ですが、報告案では象徴天皇制を維持するということでまとめられていた点には、何か違和感を感じました。当初、これは天皇制そのものを快く思っていない左派に対する懐柔策かと見ていたのですが、どうもそうではないようです。憲法調査委員の話を新聞等で読んでみると、元首ではなく象徴天皇制を支持するのは、天皇制を未来にわたって長く維持するためという意見によるもののようなのです。

 表向きは、天皇は他国の元首と性質が違い、各国にいる「元首」などと比較すらできないものであるといいます。2,000年にわたって続いてきた王家は他になく、今後も永続してほしいと思う気持ちは自然なものでしょうが、他国の元首と違うから「象徴」というのはどんなものかと思います。その裏には、太平洋戦争の敗戦によって日本が占領されたとき、このときは天皇制存続の危機であったという見方があるように思います。

 明治憲法下では、天皇機関説は受け入れられていなかったとはいえ、実際には機関説に近い運用であったことは確かです。しかし、当時の憲法で天皇を元首と規定していますから、敗戦時、天皇の処遇を心配した人が多かったのでしょう。直近での天皇制存続の危機が敗戦時だったとすれば、その危険を取り除くために元首とせず、名実ともに一切の権力を持っていないことを明らかにして、どんな国難に見舞われようとも天皇制は存続させようという意図が見えてきます。

 確かに天皇制維持を目的とすれば、非常にうまい方法ではあります。しかし、日本国が苦難に陥っているときに、天皇だけは安泰でいて果たして天皇への親密感が増すのだろうか、またそこまでしてなんになるのかと思います。戦後の日本の復興に天皇制がなかったらどうなっていたかは、仮定の話ではあっても、日本がこれほどの発展を遂げたかどうかははなはだ疑問です。その意味で、天皇制存続を第一に考えるのかもしれません。ただ、事実としては、敗戦時に天皇制はどうなるかわからなかった状態で昭和天皇がマッカーサーに会見して、自らの命乞いなど一切せず、国の復興を第一に求めたということです。天皇自身が天皇制の存続よりも、国の未来を優先したからこそ、戦後天皇制の元で日本は発展できたと考えるほうが素直な見方だろうと思います。それも、天皇は元首だからこそであって、象徴であったらこうなったかどうかはわかりません。

 天皇に何の権能を持たせるべきではないことに異議はありませんが、ただ存続させるためにそこにいるだけでは、長い歴史のなかではいずれ人心が離れていくような気がしています。政治家という「下の者」がやったことであっても、天皇は元首として責任を取る姿勢をとっていただくからこそ、天皇制を維持していくためには政治家や多くの国民は天皇に責任をとらせるようなことはしないように、自制心をもった行動ができるのではないでしょうか。2,000年も続いた天皇家を元首に戴く国の国民としての誇りを持つことにこそ、天皇制の本当の効用なのだろうと考えます。

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