« 自分のことは棚に上げても | Main | 多摩川のシャボン玉 »

2005.05.11

諸行無常

 「勝って兜の緒を締める」ことは好ましい姿勢だと思います。そういう意味でトヨタ会長で、経団連会長でもある奥田氏の日米の自動車摩擦を懸念することは必要なことといえるでしょう。そして、「勝った時が負けた時、ということを頭に入れておかないと、日本の経済界は最終的には孤立する」という発言は、傾聴に値するものだと思います。

 ただ、この方はトヨタ会長としての発言と経団連会長としての発言が、どうも混同しているのか混同していると誤解されやすいのか、区別がついていないように受け取られることは確かのようです。

 GM、フォードが格下げされる中で、トヨタは増収増益で純利益はまたしても1兆円を超えて過去最高を記録していますが、日本の自動車メーカーがすべて好調なわけではありません。日産はルノーからゴーンさんが来て荒療治をしてくれたおかげでようやく普通の健康体に戻った、いわば病み上がりの状態ですし、マツダだってフォードと組んでいるわけですから苦しくないわけはありませんし、三菱自動車は果たしてやっていけるのかどうかというところでしょう。せめてホンダに期待したいところですが、売上げで約10兆円にも上るトヨタとの差はやはり格が違うといわざるをえません。

 このような状況だからこそ、自動車摩擦が起きたら大変なことになるという経団連会長としての奥田氏の危機意識は必要なことです。しかし、米国市場での日本車の値段を上げるという発想はあまりにも安易すぎました。値上げは各社の問題と言い繕っても、エンドユーザーを無視した発言は最高益を更新しているトヨタ会長だから言えることだと思います。それより、GM等の米自動車業界の不振のツケを米国のユーザーに転化しようというその発想はどこから出てきたのか不思議でなりません。各社の問題どころか、どこにライバルメーカーの業績不振を理由に製品を値上げする企業があるのか理解に苦しみます。トヨタがそういう企業なら、それはそれでいいのですが、ただ業績がいいうちは株主も大きな声で文句は言わないだけかもしれません。

 「自動車はアメリカにとって象徴的産業である」という認識が米国内にあるなら、自由競争の結果のツケを日本企業が米国市民に回すようなことをしたら、米自動車企業や米国市民はどう感じるでしょうか。逆の立場なら決して快く思わないと感じられるかどうかが、自由競争を理解しているかどうかのリトマス試験紙といえるのかもしれません。

 トヨタのトップでさえ、ユーザーをないがしろにしてしまうという間違いを犯します。「勝ったときが負けた時」とわかっていながら間違えています。「驕れる者は久しからず」いつまでもトヨタの一人勝ちではないはずです。

|

« 自分のことは棚に上げても | Main | 多摩川のシャボン玉 »

Comments

トモリンさん、コメントありがとうございます。
奥田会長は「勝ったときが負けた時」とか言われたそうですが、聞き方によってはトヨタはもうGMに勝ったと言わんばかりですね。実際、今年中にトヨタがGMを追い抜く可能性が高いので、GMがこれを聞いたらカリカリしたでしょうね。
さて、解体屋のカーク・カーコリアン氏が動き出していますから、GM経営陣はもう生ぬるい手は打てません。「トヨタと次世代技術の技術提携?それで今期後半の売上や収益が上がるのか?」と突っ込まれることは明白です。また、組合と交渉して工場閉鎖及び人員削減のリストラが出来たとしても、年金債務が膨らむだけで、反って自分の首を締めるだけです。
今のところGMを立て直す解は見当たりません。もしGMを立て直せる解が分かる人がいれば是非教えを請いたいものです。
では、また。

Posted by: Duke Ken Usui | 2005.05.17 at 23:03

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/64797/4071157

Listed below are links to weblogs that reference 諸行無常:

» トヨタ 2期連続で1兆円突破 [依存症の独り言]
トヨタ自動車が10日発表した05年3月期連結決算は、最終(当期)利益が前期比0.8%増の1兆1712億円となり、3期連続で過去最高を更新し、2期連続で1兆円を超えた。円高による為替差損や原材料価格の高騰の影響を、北米やアジアでの大幅な販売増とコスト削減で吸収した。利益水準は、販売不振に陥っている米ゼネラル・モーターズ(GM)やフォード・モーターを大きく引き離した。売上高は同7.3%増の18兆5515億円、本業のもうけを示す営業利益は同0.3%増の1兆6721億円で、いずれも過去最高を更新。5期連続の... [Read More]

Tracked on 2005.05.12 at 22:19

» GMのワゴナー会長が愛知万博を訪問、ついでにトヨタと技術提携? [日本の中心で、馬鹿を叫ぶ!]
先週S&Pが業績不振に陥っているGMの社債を投資不適格にしましたが、早速解体屋の [Read More]

Tracked on 2005.05.16 at 23:11

« 自分のことは棚に上げても | Main | 多摩川のシャボン玉 »