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2005.07.07

不良債権と金利

 銀行が経営再建中の企業の融資条件を緩和して再建を助けることはよくあることです。企業の返済を一定期間ストップして、資金繰りを楽にして本業に力を入れて立ち直れば、再び融資の返済ができます。このとき、当たり前の話ですが、返済をストップしている間は新規の融資はありえません。業況がおもわしくなくて、借りたものの返済を待ってもらっているのですから、これにさらに借金を重ねることは自分で自分の首を絞めるようなものであることは容易に理解ができます。

 返済をストップしても、元金のストップであって利息だけは払い続けることが一般的です。なぜなら、利息まで止めてしまうと利息分が元金部分に組み入れられますから、元金額が大きくなって膨れ上がっていきます。業況が回復しても途方もない借金が残っていては元も子もなくなってしまうからです。さらに、元金をストップするに当たっては融資利率を引き上げるのが筋というものです。引き上げるといっても支払う利息額が元金額ほどになっては意味がありませんから、そこまでは引き上げることはありえません。ただ企業の業況が改善しなければ将来的には返済は不可能になるわけですから、それだけ返済されない可能性の高い融資になっているといえます。すなわち不良債権です。

 不良債権は正常債権よりも高い率で貸倒引当金を積んで万が一の場合に備える必要があります。融資利率の引き上げ分は本来その高い率の貸倒引当金に充当するためのものです。

 不況の時には銀行はこのような企業支援をして、企業の立ち直りを促して景気回復につなげていくのですが、銀行事態の業況が悪いときには企業を応援できないこともでてきます。不良債権を出すと貸倒引当金を積んで銀行の利益が少なくなります。銀行自体の業況が悪化します。でも企業の業績が回復しないと銀行の回復もありえません。

 そこで、不良債権を出さずに企業の資金繰りを応援する方法が必要となります。それが融資金利の引き下げです。元金の返済はストップしませんが、利率を下げて支払利息を少なくして企業の資金繰りを応援します。元金をストップしたほうが企業は助かるのでしょうが、それができないために利息を少なくすることで企業と銀行が折り合いを付けたということになります。

 果たしてこの業況の悪化した先の金利を低くするというやり方は肯定されるのでしょうか。当然ですが、肯定されません。これは不良債権隠しです。不良債権隠しに基づいて銀行の財務諸表が作成されれば明らかに粉飾決算です。個別案件の金利は貸す方と借りる方の合意によって決まるもので、上がろうが下がろうが金融庁などの第三者が口を挟むことではありません。しかし不良債権隠しをやっているとなると話は別です。不良債権を一定以上に増やすと銀行が著しい不利益を蒙る会計ルールは、銀行の預金者や銀行の株主さらには銀行と取引をするあらゆる人々にとって必要であるから設けられたルールです。これを一企業を応援するために無視しては正常な経済活動に支障をきたす恐れがでてきます。

 金利を不当に低くして不良債権隠しをしているかどうかはどうやって見つけるのでしょうか。いまや貸出金利の平均は1.4%台と低水準です。優良企業に貸し出すために競争の結果低金利となったのか、不良債権化するのを恐れて低金利にしたのか、これは融資先の企業の業績を見て判断するしか今のところなさそうです。具体的には金融庁が検査に入って個別に調べなければ分からないということです。

 銀行の預金者や株主の立場にたつなら、自己責任を求められながら銀行の融資姿勢を判断する方法が、数年に一度程度の金融庁の検査を待つだけというのは甚だ心許ない気もします。不良債権額は公表されるようになって久しいのですが、これで十分とは到底言えないのではないでしょうか。銀行の内部で査定した格付けごとに融資先数、融資額、平均金利なども公表してもいいのではないかと思います。

 貸出金利は企業の業績だけで決まるものではなく、企業の従業員も含めた総合的な取引振りも勘案されるのでしょうが、格付けごとの貸し出し条件の推移が分かれば不良債権隠しの兆候は出てくることが期待されますし、何より銀行への牽制にもなるはずです。金利は低いだけがいいことではありません。調達した資金に4~5%の金利を支払ってもペイするだけの利益率の事業を育てることが必要なのだと思います。

 

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