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2007.01.26

残業代割増率引き上げ反対論

 残業代の割増率を引き上げることに反対などというと、多くのサラリーマンを敵に回すかもしれませんが、残業代を増やすことについてはいいことなのかどうか疑問に思います。企業の業績が好調にもかかわらず、従業員の給料がなかなか増えない現状では、せめて残業代だけでも上げてくれというのが、多くのサラリーマンの声なのかもしれません。しかし、今でもかなりの長時間労働になっているというのに、残業代を増やせば残業を減らそうとするインセンティブは働かなくなるのではないでしょうか。

 従業員が自分の裁量で、残業代が増えた分だけ残業時間を短くできるのならいいのですが、現状ではそうではない人が多いと思います。そうすると、残業代が増え多分だけ収入は増加しますが、残業による収入が増加するとあえて仕事の生産性を上げて残業時間を減らすよりは、残業を減らさないようにするかもしくは増やそうとさえするかもしれません。残業代が増えることで、働く側としては今より喜んで残業をやろうとするでしょう。一方で経営者の方には、残業をやられるとコストアップとなるため、これを抑制させようとするはずだという考えもあるかもしれません。でもいまは企業業績が好調ですから、コストが多少高くなっても、残業をしてもらってそれ以上に収益を上げたほうが得だということは大いにありうることです。そして業績が悪くなれば仕事も減って残業も減るでしょうから、コストも抑えられます。現に経団連の御手洗会長は、「短期的な好業績の成果は、ボーナスや一時金の形で大いに還元すべきだ」と発言しています。ボーナスや一時金が残業代に置き換わっただけで、あくまで業績の成果を変動費にしておくことに変わりありません。

 設備投資を中心に盛り上がってきた景気が、消費に結びついて欲しいのにそうならない原因に、正社員・非正社員ともに給料が増えないからだという意見があります。しかし一方で、企業は中国や東南アジアの安い労働力とも競争しなければならず、安易に人件費を上げることには慎重です。

 残業代が上がって、手取りの収入が増えると消費は活発になるのでしょうか。全く消費が増えないことはないでしょうが、残業ばかりやっていては増えた収入を使う暇がありません。理想をいえば、残業が減って、その上で給料が増えて欲しいものです。消費するカネと時間が手に入って消費が盛り上がり、景気拡大もまだしばらく続くのであれば、企業も人件費の上昇に耐えられるはずです。しかしそんな理想が実現するのでしょうか。

 それには働く人の生産性のアップが必要になります。残業をしてまでやっていた仕事量を、残業なしでできるようになれば、消費のための時間ができます。残業をしていたときの仕事量と変わらないのなら、時間として残業をしていなくても残業をした場合と同じ人件費をかけても企業は文句はないはずです。これに好業績分の上乗せをしてもらえば、働く側の手取り収入は増加します。こうなるためには、時間で計算される残業代を増やしても、働く方の生産性アップは期待できません。残業代込みの収入を維持したまま、残業時間を減らすことができるような仕組みが必要です。

 ここまで考えてくると、「残業代ゼロ法案」として法案提出を見送られるホワイトカラー・エグゼンプションが思い出されます。残業をしているのにいまの収入から残業代がなくなるとすると、これはとんでもないことですが、今もらっている残業代プラスアルファが給料となって、残業してやっていた仕事の質と量を落とさなければ、それにかける時間を短縮しても残業代が削られることがないとなれば、悪いことばかりではありません。当然のことながら、生産性をアップして時間に余裕ができても、他の仕事をさせられては収入に見合った仕事量にはなりませんから、この点を組合などがしっかり監視する必要はあるでしょう。

 ホワイトカラー・エグゼンプションは残業代ゼロだからダメだとばかり言うよりは、どのような条件なら取り入れることができるかを検討する方がより建設的なのだろうと思います。今の労働環境を改善するためには、何の努力もせずに文句ばかり言っていてもはじまりません。生産性の向上なくしては改善もありません。残業代アップを求めて残業によって収入の増加を図ることと、自らの生産性の向上に挑戦するためにその条件整備を検討することと、どちらが自分たちのためになることなのか。もう一度冷静に考えてみる必要があるのではないでしょうか。

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