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2007.05.04

本当に冷たい国はどこか

 先月、最高裁は「1972年の日中共同声明により、中国人個人は日本に対し戦争被害について裁判上、賠償を請求することはできなくなった」との初の判断を示しました。国際法上はいろいろ論争もある分野のようですが、本当に個人の人権を重視するなら、一番オーソドックスに個人は外国政府に損害賠償を求めることはできないとするべきではないかと思います。こういうと個人の人権を重視するなら逆に請求権を認めるべきだろうと思われるかもしれません。でも、一個人が外国政府相手に、相手国の裁判所で裁判を起こして勝訴を勝ち取ることは、普通に考えれば難しいことだろうことは容易に想像がつきます。それを建前だけは認めようとすると、結局は被害者個人の救済がなおざりになってしまいます。

 この判決では、サンフランシスコ平和条約を、

「個人の賠償請求権を含め、戦争中の行為に関するすべての請求権を互いに放棄することを前提に日本と各国の戦争賠償の処理の枠組みを定めたもの」

と指摘していますが、仮にそのように定めていなかったとして、例えば無差別殺戮といえる可能性の極めて高い原爆の被害者がアメリカ政府に対して損害賠償を求める裁判を起こして、満足いく判決をもらえると考えるでしょうか。あるいはシベリアに抑留された人々が、ロシア国内でロシア政府を相手取って損害賠償を求めて、それが認められると考えるでしょうか。

 さらに、原爆被害者に対してあれはアメリカの戦争犯罪だから、被害の補償はアメリカに求めなさい、という態度を日本政府がとって、被爆者への救済措置を何らとらなかったら国際的にも国内からも非難を受けることでしょう。まずは自国の政府が緊急に被害者の救済を図り、その上で相手国に非があるのであれば政府が国民に変わって賠償を求める外交交渉を行ったほうが、被害者の救済という観点からも、現時相手国に賠償させるための実効性の面でも効率的です。サンフランシスコ条約では日本も他国から損害賠償を求められることがあるし、互いに争い合っても建設的ではないからそれを求めないことを確認したわけです。

 中国人元労働者が賠償を求めて日本で裁判を起こすということは、元労働者たちは中国国内で救済を図られていないということを露呈しています。中国国内で補償された上でさらに日本に賠償を求めたなら二重に損害を賠償することになって、いわゆる“焼け太り”になってしまいます。本当に被害者を救済するなら、まずは自国の政府ができることをやって、その上で外交交渉をするのが筋だと思います。

 日本は戦争に負けたのだから外国政府に損害賠償を求められないのは仕方がないことで、中国と同様に考えることはできないという人がいるかもしれません。しかし、中国は勝ったにもかかわらず自国民に被害を出しています。勝ち戦にもかかわらず自国民を守れなかったのですから、それを補償することは当然といえば当然です。その上で日本に求めるものがあるのなら、自国民の個人任せにせずに、政府が交渉するべきです。もっとも中華人民共和国政府は当時なかったわけですが、それは中国国内の事情で日本への賠償請求とは関係ありません。それに中国が日本に損害賠償を求めないことは現在の中国政府が調印した日中共同宣言で明確になっていますから、結局は自国民の被害は自国で救済するということが建前です。明確にその見返りとは謳われていませんが、日本は戦後アメリカから多大な援助を受けましたし、日本も中国には多大なODAを実施しています。ソ連やロシアとの間には、残念ながら冷戦や北方領土問題があってそのような見返りはありませんが、だからといって過去にこだわるばかりでは何も解決しないことは多くの人が認めるところです。

 最高裁の判決は、明確に個人の賠償請求権を否定してはいませんが、結果的に他の係争中の判決に影響を与えます。従軍慰安婦など、あれは元慰安婦といわれる人たちはかなりの虚偽の証言をしているはずだと私は見ています。米議会で証言し、重大な人権侵害とまで言われることがもし本当なら、韓国内で一刻も早い救済をするはずで、いまだに日本で裁判を起こすということは、いかに自国での補償がないかを示すことに他なりません。北朝鮮の拉致被害に無頓着な韓国ならそれもあるかもしれませんが、私が知る韓国の人は人権を理解しないような人たちではないと思っています。ということは、韓国の人たちも、多くはあの元慰安婦たちの嘘を知っていて、あんなのに自分たちの税金を使うようなことはまっぴらゴメンと思う一方、日本がカネを出すならそれはそれで彼女たちはうまくやったと思っているのではないでしょうか。

 いずれにせよ日本にタカる“嘘つき”を野放しにしているのか、本当に気の毒な自国の戦争被害者を放っているかどちらかだと思うのですが、日本の裁判所は被害事実の認定をしている以上、公的には原告たちは嘘つきではないと認めざるを得ません。それならその被害者を放っている本当に冷たい国は、その裁判を起こしている原告たちの母国だということになるようです。

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