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2007.06.29

強くなりたかった少年

彼は僕のために学校を辞める羽目になった。

僕をいじめていたのは彼だということになった。

でも違う。彼ではない。僕をいじめていたのは彼ではなかった。

そんなこと、言えやしなかった。言ったらどんなことになっていたか。

彼は最後に僕に向かってこういった。「強くなろうぜ」

彼が学校を去ってからも、殴られたり金をとられることに変わりはなかった。

これではたまらない。

ある日学校を去った彼に会った。彼はチンピラ仲間とつるんでいた。彼らと組むことにした。

いじめの連中を呼び出し、彼が言った。「なんで俺が追い出されなきゃならなかったんだ。」

いじめ連中は僕を指差して、「あいつがそう言ったから」と言った。

「そう仕向けたのはどこのどいつだ。」チンピラ仲間がいじめ連中を殴り倒した。

それから立場は逆転した。いじめ連中と学校の隅で会うことに変りはなかったが、殴られたり金を取られることはなかった。

逆にやつらから金を取った。取った金は全部チンピラに渡したけれど、殴られなくなっただけましだった。

そんなことがいじめ連中が卒業するまで続いた。

いじめ連中が卒業した後、金を巻き上げる相手がいなくなり、チンピラ仲間の機嫌が悪くなった。

彼は機嫌が悪くなって当り散らすチンピラ仲間を刺した。

少年院に入った彼を訪ねたとき、彼は僕に言った。

「本当に強くならなくちゃね。」

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2007.06.27

批判のための批判

 年金支給漏れ問題への「けじめ」として、安倍首相らが賞与の自主返納を決めたことについて、いろいろな反応があります。野党側から選挙目当てのパフォーマンスという批判が出ることには、それが当たっているのかどうかはわかりませんが、理解はできます。ただ身内である自民党から、「首相がボーナスを返上しても、国民の信頼が返ってくるとは思わない」などと批判することはどんなものかと思います。

 これは安倍政権に批判的といわれる加藤紘一元幹事長の発言ですが、ボーナスを返上してもそれだけで国民の信頼が戻らないことなど、誰も目にも明らかであり、当の安倍首相自身一番よくわかっていることでしょう。大切なことはこの問題を速やかに、できる限り多くの国民が納得できる形で解決することです。そのためにボーナスを返上しなくてはならないということはありませんし、ボーナスを返上すれば解決するものでもありません。しかし、まずはどれだけの覚悟を持って取り組むのかという姿勢を見せることは必要です。

 それがボーナスの返上である必要はないのかもしれません。むしろ政治家よりも社会保険庁の職員にこそ、返上してもらった上でこの問題に取り組むべきだというのが多くの国民の気持ちなのかもしれません。しかし、社保庁の職員のボーナスを取り上げる方法をわれわれは持っていませんから、自主的に返上することを待つより仕方がありません。それを促す方法として、リーダー自ら範を示したものと考えられます。

 ボーナスの返上で終わりにしてもらっては困りますが、そうではなくてこれから取り組む意気込みをこういう形で示したものと見れば、むげに批判だけするのもどうかと思います。批判よりも建設的な意見が求められていることに、気づかないのか意見がないのか。批判のための批判こそ、国民の信頼を遠ざけているように思えてなりません。

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2007.06.26

どんな日でも

「こんな梅雨の季節だった。」 とあるバーで聞こえてきた話。

「最初は赤い傘が揺れていた。花壇の向こうで。それが一歩一歩近づいてきて、傘の中に女が見えてきた。花壇には紫陽花がいっぱいだった。これが最初の恋だった。」

「その女とは、どこへ行くにも雨だった。デートをすると、最初はいい天気でも、必ず帰りまでには雨が降る。だから、こんな雨女とは長くは付き合えないと思った。」

「別れ話を切り出すと、『あなたのような雨男は、わたしがついていなければダメなのに』なんて言われたよ。彼女にしてみれば、俺が雨男だったわけだ。」

「その女と別れてからしばらくして、今度は白い傘、日傘が花壇の向こうで揺れていた。一歩一歩近づいてきて、傘の中に女が見えてきた。花壇には向日葵がいっぱいだった。これが二度目の恋だった。」

「その女とは、どこへ行くにも晴れだった。デートをすると、いつ降り出してもおかしくない空模様でも、なぜか途中からいい天気になる。だから、こういう晴れ女とは結婚したいと思った。」

「プロポーズをすると、『あなたのような晴れ男は、無駄に運を使い果たしていて、わたしにはもう興味はないの』なんて言われたよ。彼女にしてみれば、俺は無駄な晴れ男だったわけだ。」

「3番目にいまのかみさんと出会った。出会ったときの天気なんて覚えてないさ。確か大学の教授の家に、学生が大勢集まったときに居合わせたのが、最初の出会いだったかもしれない。」

「いろんなことがあったけど、晴れたり曇ったり、雨の日もあった。そうそう東北に転勤していた時期もあったから、雪の日もあったな。天気なんて気にしている暇もなかったってのが本音なんだがね。」

そう言うと、初老の紳士は席を立って店を出て行った。ちょっといい話を聞いたので、バーボンをもう1杯飲んでから帰った。

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2007.06.25

ホントの原因

 安倍内閣の支持率が落ちています。日経新聞によると、支持率が4割を切るのは森政権末期の2001年2月以来ということです。松岡前農相の自殺や、年金問題が足を引っ張っているということでしょうが、悪材料がいろいろ出てくる現状ではやむを得ないのだろうと思います。さらに日経新聞紙上には、参院では与党の過半数割れをほぼ半数が望むという結果も出ていました。

 衆院では与党勢力が圧倒的なので、参院では均衡させるために与党は過半数割れした方がいいという判断があるのかもしれません。強行採決の様子をテレビで見るたびに、ああいうことは国会でやってほしくないと思います。人を羽交い絞めにしたり、マイクを投げ捨てたり、非常に見苦しい。

 では強行採決をしなければいいのでしょうか。それもどうかなという気もします。というのは、テレビで“強行採決”といって流されるシーンは、あれは強行採決に腹を立てた野党議員の乱暴狼藉であって、必ずしも強行採決を映した映像とはいえません。とするなら、あの見苦しい光景を目にしないためには、強行採決を非難するより、まずは自分の意見が通らないからといって暴れる国会議員を何とかする必要があるように思います。

 強行採決もいいことではありませんが、強行してでも速やかに通すべき法案もまったくないとはいえません。強行採決をただ非難するだけでは、何もしない国会を望んでいるかのようです。殴る理由に共感できるからといって、殴った者の肩を持って殴られた方が悪いということはできません。強行採決は民主主義を壊すという意見もありますが、いつまでも議論だけしていては何も始まりません。

 まずは不快を感じる原因はなんなのか、強行採決なのか、暴力行為なのか。それを見極めた上で、次の選挙の投票に当たって参考にしたいと思います。

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2007.06.07

トンボ

 先週の土曜日だったでしょうか。今年初めてトンボを見ました。朝ベランダに出ると、前の晩に干しっぱなしにしてしまった洗濯物にトンボがじっと止まっていました。
070602 シオカラトンボにしては大きい、よく見ると横じまが黄色っぽくも見えますが、まさか羽化したばかりの鬼ヤンマってことは・・・

昔、子供の頃、夏休みに父親の実家へ行き、朝から従兄弟たちと遊びまわっていたときに、ヤゴから出てきたばかりでまだ飛べない鬼ヤンマを捕まえて、胸にバッジのようにつけて遊んでいたことがありました。そろそろ朝ごはんという頃、気がつくと胸の鬼ヤンマはいつの間にかいなくなっていました。飛び立った気配など微塵も感じなかった私は、どこかに落としたのかと辺りを見回しました。残念なことに近くにはどこにも鬼ヤンマは落ちておらず、従兄弟たちはまたあとで今度は飛んでいるのを見つけようといって、食事に行こうとしたときでした。私たちの頭の上を大きな鬼ヤンマが悠然と飛んでいました。どう見ても胸につけていたときよりも大きく見えます。これがさっきまでこの胸にいたあの鬼ヤンマかどうかはわかりません。ただその鬼ヤンマは、威厳に満ちた感じであたりを旋回して、私たちを睥睨しているようでした。

 しばらく空腹も忘れてその鬼ヤンマに見とれてしまったのですが、そんなことがあった日から、もう30年以上も経ってしまいました。一緒に遊んだ年長の従兄には、もうじき孫が生まれます。

 朝の散歩から帰ると、ベランダの今年初めてのトンボはもうどこかに行ってしまったようでした。これから、あのトンボも悠然と飛び回り、どこかで私を見下ろすかもしれません。この夏を自由に満喫してもらいたい、幼い頃のことを思い出して、そんなことを思いました。

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