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2007.06.26

どんな日でも

「こんな梅雨の季節だった。」 とあるバーで聞こえてきた話。

「最初は赤い傘が揺れていた。花壇の向こうで。それが一歩一歩近づいてきて、傘の中に女が見えてきた。花壇には紫陽花がいっぱいだった。これが最初の恋だった。」

「その女とは、どこへ行くにも雨だった。デートをすると、最初はいい天気でも、必ず帰りまでには雨が降る。だから、こんな雨女とは長くは付き合えないと思った。」

「別れ話を切り出すと、『あなたのような雨男は、わたしがついていなければダメなのに』なんて言われたよ。彼女にしてみれば、俺が雨男だったわけだ。」

「その女と別れてからしばらくして、今度は白い傘、日傘が花壇の向こうで揺れていた。一歩一歩近づいてきて、傘の中に女が見えてきた。花壇には向日葵がいっぱいだった。これが二度目の恋だった。」

「その女とは、どこへ行くにも晴れだった。デートをすると、いつ降り出してもおかしくない空模様でも、なぜか途中からいい天気になる。だから、こういう晴れ女とは結婚したいと思った。」

「プロポーズをすると、『あなたのような晴れ男は、無駄に運を使い果たしていて、わたしにはもう興味はないの』なんて言われたよ。彼女にしてみれば、俺は無駄な晴れ男だったわけだ。」

「3番目にいまのかみさんと出会った。出会ったときの天気なんて覚えてないさ。確か大学の教授の家に、学生が大勢集まったときに居合わせたのが、最初の出会いだったかもしれない。」

「いろんなことがあったけど、晴れたり曇ったり、雨の日もあった。そうそう東北に転勤していた時期もあったから、雪の日もあったな。天気なんて気にしている暇もなかったってのが本音なんだがね。」

そう言うと、初老の紳士は席を立って店を出て行った。ちょっといい話を聞いたので、バーボンをもう1杯飲んでから帰った。

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