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2007.08.31

バラマキを越えて

 先日、民主党のバラマキといわれる農政基本法案が明らかになりました。農家一軒ずつ補助金を配るわけですから、バラマキであることは確かですが、バラマキというよりも仕組み自体におかしな点があるなと感じました。

Image1_2  農家に補助金を渡して休耕地をなくし、食糧自給率を上げようという趣旨は理解できるのですが、この補助金は所得補償といいながら、何の所得にもなっていない点がおかしいと思います。

左の図は日経新聞のコピーですが、補償するのは市場価格を生産費の差額です。言い換えれば補助金をもらっても生産費、すなわち経費を賄うだけで何ら儲けはなく、この補助金をもらって農作物を作っても所得にならないということになります。

狙いは自給率アップですから、農家が補助金をもらって儲ける必要はないというつもりかもしれません。しかし、それでは日本の食糧自給率アップのために農家はタダ働きをせよということであって、格差是正どころか働いても働いても所得は増えず、ますます格差を広げることになりかねません。

 それでも下手に作物を作れば赤字になるために休耕地を放置していた農家は、せめて持ち出しにならないならと、タダ働きをするかもしれません。その結果、国内で作る農作物が出回れば自給率は上がります。しかしそれは農家が赤字よりはいいと言ってタダ働きをしてくれたためであって、それで食糧自給率が永続的に上がっていくとは到底思えません。

 それなら自民党のいう農家の規模拡大をして、その上で補助金を使ったほうが効果的だろうと考えられます。農地を貸し出すことで農業に従事する農家一戸あたりの農地を拡大すれば、生産費が安くなることが可能です。その上で補助金を出せば、これで農家は儲けを出すことが可能になります。
Image2
補助金で農家を儲けさせることはどうかという議論もありますが、ここではそこには触れません。なぜなら、この儲けは農業に従事する農家だけのものではなく、農地を貸し出した農家へも地代として還元されるもので、結果的にすべての農家にとっておいしい話になりうることだからです。

民主党の法案では農家へ補助金を出しても、儲けである所得にはならず、戸別所得補償とは名ばかりものでした。しかし、大規模化を図った上で補助金を出せば、農業に従事する人は生産費を抑えることで収益を生み、農地を貸し出した農家は生産費さえも掛けずに地代として所得を手にすることができます。どちらが効率的かは一目瞭然です。

 戦後の自作農主義から、農家の中には農地を貸し出すことに抵抗があるかもしれません。しかし、戦前の地主がそうであったように、一定の生産性が確保されるなら農作業は他人にやらせたほうが実入りはいいはずです。

Image3 それは市場価格が下がったときのことを考えればわかります。生産費が変わらずに市場価格が下がれば、儲けは減少します。農業従事者の所得は減りますが、農地を貸している農家の地代は、一般に長期契約をすることが多いでしょうから、毎年の市場価格にかかわらず一定のはずです。市場価格に振り回されずに農家の所得は安定します。そして補助金はそれを担保するためと考えれば、農家の儲けのための補助金も、格差是正の一環という位置づけになります。

それでも補助金の類いはいずれなくす方向で考えなければなりませんが、地方の反乱も放って置くわけにはいかないでしょうから、ある程度はバラマキはやむを得ないとするのが民意というものなのでしょう。それに自民党の規模拡大化路線は、一部の農家だけを優遇するものという批判も当たらなくなります。

なんにしても民主党の法案は決していい法案ではないといえますが、それをたたき台にしてよりよい法律にしていくことを、これからの国会に期待したいと思います。

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