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2007.10.18

年金着服、真の被害者は

 市町村職員による国民年金保険料などに着服問題で、犯人を告発しない自治体には納得できないものを感じます。舛添厚労相の指示で社会保険庁が自治体に代わって告発したことは当然であり、妥当な措置だと思います。これに対して、宮城県大崎市伊藤康志市長は、「自治の侵害」として不快感を表したといいますが、問題の捉え方が違うと思います。

 伊藤市長は、着服した元職員は懲戒免職にしており、「懲戒免職は十分に厳しい処分だったと思う。旧田尻町の町民には理解を得られている。」と述べているといいます。しかし、懲戒免職が厳しい処分なのかどうかを市長が決めることではありませんし、内輪で厳しい処分が行われればそれでいいというものではありません。それに旧田尻町民の理解を得られたとしても、それだけの問題ではないはずです。

 公的年金の保険料が着服された場合、実質的な被害者は誰なのでしょうか。第一義的には着服された保険料を支払った旧田尻町民の方々といえるでしょう。しかし、今回は着服をした元職員は旧田尻町の領収書を盗んで発行していたといいます。もし着服事件が発覚しなかったとしても、正式な領収書があれば旧田尻町民の方々が未納扱いにされることはないだろうと思われます。

 では他に被害者になりうるのは誰でしょうか。公的年金は世代間扶養の考え方に基づいて、賦課方式で運営されています。いま支払った保険料は、いま受給している人々の年金原資になります。その保険料を着服したとなると、現在の年金受給者が被害者といえそうです。しかしすでに年金を受給している人は、よほどのことがない限り現行法で決まった受給額が減ることはありません。そうすると年金受給者に不利益が及ぶことはなさそうです。

 そうすると、年金保険料の着服による被害者は、トータルで年金財政の収支バランスを崩して将来の年金受給額を引き下げるということで、これから年金を受給する現役世代の人々、さらに将来の国民ということになると考えられます。

 これから年金を受給するという意味では、旧田尻町民の人々も被害者ではありますが、彼らが被害者のすべてではありません。他の多くの被害者たる国民に何の断りもなく告発をしないという姿勢は、まさに内向きで内輪だけにしか通用しないものです。地方自治体の業務とはいえ、地域を越えて多くの国民に関わりのある公務もあるはずです。それなりの責任感が必要だと思います。

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2007.10.09

ふるさと納税の効用

 総務省のふるさと納税研究会による報告書がまとめられ、総務大臣に提出されました。(ふるさと納税、研究会が報告書提出 NIKKEI NET)ふるさと等自分の選んだ自治体へ寄付をして、寄付をした金額を支払うべき住民税から差し引けるという税額控除方式ですが、納税先を選ぶことができるというのは画期的なことだと思います。

 先日、年金保険料を着服した職員を告発しないという自治体が相次ぎました。(NIKKEI NET)着服した保険料は返還しているとか、社会的制裁を受けているとか、犯罪の現場での事情や判断があるのだろうと思います。それがどのようなものなのか、私にはよく理解できませんが、公的年金の保険料は各自治体の問題ではなく、日本国全体の問題です。

 ふるさと納税制度ができて、寄付金の額の増減を見ていれば、このような問題が生じたときに外からの視点を、各自治体に知らせる効用もあるのだろうと思います。ふるさと納税制度は、地方の格差是正には効果がないと言われます。その通りだと思います。でも、ふるさと納税制度の効用は、格差是正に限らないのだろうと思います。

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2007.10.01

そんなに暴論とは思えない

 鳩山法相の「署名なし死刑」発言に批判がありますが、それほど批判されるような発言なのでしょうか。毎日新聞では社説で暴論扱いをしていますが、どうも的外れな感じがします。

刑事訴訟法が死刑執行は法相の命令による、と定めているだけでなく、法務省が管轄する拘置所が死刑囚を拘置し、検事や刑務官らが執行に携わっている。

だから法務省のトップである法相の責任を曖昧にすることは許されないと、毎日新聞の社説は言いますが、刑事訴訟法は死刑の執行は6ヵ月以内と定めているにもかかわらず、それが守られていない現状をどうするのかということは全く触れていません。一方では法律を持ち出して法相の発言を批判しながら、その同じ法律が守られない現状を無視してしまっています。

死刑執行命令書の作成に先立って、法務省刑事局が確定判決の資料を司法判断とは別に精査し、執行の可否を決定していることも忘れてはならない。

毎日の社説はこうも言っています。しかし、“司法判断とは別に精査”するようなことは、刑事訴訟法は求めていません。確かに、死刑囚が心神喪失状態にあるとか懐妊しているなど、外形的に死刑の執行が適当ではないかどうかといったことは確認すべきでしょうが、もし裁判の内容にまで踏み込んで記録を再度精査しているというのであれば、それは必要ないことですし、言い方がキツイかもしれませんが無駄なことです。第一、行政府の法務省は司法府の裁判所を信用していないということにもなります。

 死刑制度にはその賛否についていろいろな意見があり、死刑の執行に責任を持つ法務大臣が悩むのはある意味当然のことです。就任早々に「死刑執行のサインをしない」と発言する大臣に比べれば、鳩山法相はよほど真摯なのではないかと思います。

 今度の鳩山法相の発言を“法相としては不用意で致命的な失言”という毎日新聞の社説のような意見は、一方的な見解の押し付けであり、むしろ改めて死刑制度について論議するいい機会と捉えるべきではないかと思います。10月から再開される国会で、法相の進退などといった問題の矮小化だけは避けて欲しいものです。

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