« 改善へ向けて | Main | 思ったよりも深刻 »

2008.02.12

見えなくするもの

 時津風部屋で起こった暴行致死事件が、ここ数日テレビのワイドショーを賑わせています。テレビを見ていると、元親方や暴行を加えた兄弟子は酷いことをするなと思います。こうした報道を見ていて気になったことがあります。相撲界の上下関係の厳しさと、暴行をした兄弟子もまた被害者であるかのような論調が見られることです。

 親方の指示は絶対であり、「やれ」と言われれば逆らうことはできないとか、あの弟子たちも別の部屋に入っていれば逮捕されるようなことはしなかったはずなのに、といった論調です。元関取の竜虎氏も次のように言っています。

「全責任は師匠にある。兄弟子たちは被害者ですよ。これからがんばってという若者なのに。親方にいわれればやりますよ」

 しかし、そうなのかなという疑問が湧いてきます。相撲に限らず、スポーツの世界では上下関係は厳しいものですが、上の人から言われたらそれは絶対で、犯罪でも従わなければならないというようなことは、違うだろうと思います。そういう理不尽な組織もあるのかもしれませんが、大半はそんなことはないというのが、私自身の経験や周りの知人、友人の話を聞いての実感です。

 朝日新聞の2月9日の天声人語に、相撲の稽古と暴力を「似て非なるもの」といっていました。

相撲部屋という「畑」にも、けいこにまじって、暴力という「似て非なる雑草」がはびこっていた。時津風部屋の若手力士、斉藤俊さんが急死した事件で、当時の親方と兄弟子3人が逮捕された。だが、「この部屋だけか」という疑念がぬぐえない

 「似て非なるもの」だから、相撲の稽古に暴力が入り込んできてしまったということを言いたいとも読めるのですが、相撲の稽古はもちろん、他のどんなスポーツの練習でも、暴力とは「似て非なるもの」どころか、「似ても似つかぬもの」というのが私の実感です。

 兄弟子たちは稽古ではなく暴力であることを認識していたはずだと思います。暴力を命じられて従わざるを得ない状況ではなく、潜在的にせよ暴力を振るう意思があるところに親方の指示があったという見方もできます。むしろその方が自然だと思えます。すべての責任は親方にあるというのはその通りだとは思いますが、だからすべてを親方が指示してそれに従っただけの兄弟子も気の毒だというのは、真実を見えなくするだけのような気がします。

 どうしてこのようなことになったのか、真実を明らかにすることが大切です。犯罪に加担した者を被害者だというようなことは、真実を見えなくするだけではないかと思います。

|

« 改善へ向けて | Main | 思ったよりも深刻 »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/64797/40088455

Listed below are links to weblogs that reference 見えなくするもの:

» 天下り官僚vs.ハゲタカ外資! [Empire of the Sun      太陽の帝国 ]
 国土交通省が羽田や成田の主要空港施設に外資規制をかけようとの計画に渡辺喜美金融 [Read More]

Tracked on 2008.02.28 at 16:30

« 改善へ向けて | Main | 思ったよりも深刻 »