2005.09.05

財布の小銭

 電子マネーの普及で硬貨の流通量が減っているといいます。(硬貨流通、初の減少・7月末、電子マネーなど普及映す )その昔、消費税導入の頃、財布に小銭がやたらと増えて煩わしいと感じていたのが17年経ってようやく快方に向かうということでしょうか。でも今の感覚では、あの当時感じた煩わしさほどではないような気がしています。慣れもあるでしょうし、税率が3%から5%になっていくぶんキリが良くなったせいもあるかもしれません。というより、考えてみれば以前より財布の中にプリペイドカードなるものを入れるようになったと思います。私は交通機関に乗る時の小銭のわずらわしさが嫌いなので、スイカにパスネットカード、最近はほとんど乗らないのにバスカードもあります。市バスの回数券もプリペイドカードのようなものです。やはり慣れなどというよりは、確かに財布の小銭は減ってきたのだと思います。

 まだ学生の頃だったでしょうか、バスに飛び乗ったはいいのですが五千円札しかもっていなかったことがありました。料金先払いで乗ったと同時くらいにバスが出たものですから、走り出した後に運転手さんにおずおずと五千円札しかないといったら怒られたことがあります。
「バスに乗るときは小銭をご用意くださいといつも言ってるよね。」
「五千円札しか持たずにバスに乗るのは非常識じゃないの。」
当時は言い返すこともできず、とりあえず運転席のそばで申し訳なさそうに立っていて、降りる停留所が近づいたところで、「次ぎ降りるのですが」といったら、結局は料金を払わずに降ろしてくれたことがありました。

 JR東日本はスイカ普及にJCB、UCと組むといいます。(JR東日本、「スイカ」普及へJCB・UCと組む )JCBやUCが加盟店にスイカの取り扱いを紹介するということです。家電販売店なら、テレビを買うときはクレジットカードを使い、リモコンの電池だけを買うならスイカを使うといった棲み分けでしょうか。スイカが駅中のコンビニなど以外でも使えるようになることは歓迎です。できればスイカへの資金の入金を、現金やビューカードだけではなく、JCBやUCなどのクレジットカード、あるいはキャッシュカードが使えるようになればさらに使いやすいと思います。それと残高がわかるような仕組みも欲しいですね。

 1万円未満くらいの金額をキャッシュレスで決済するならクレジットカードよりもデビットカードやプリペイドカードのほうがニーズは高いような気がします。私の感覚では、クレジットカードは持ち歩くにはちょっと危険かなと思うような金額の支払に、プリペイドカードは煩わしいと感じる小銭の支払に使うという感じでした。しかし、最近はプリペイドカードへのチャージが面倒だなと感じます。クレジットカードは使うだけで銀行口座での決済に何かする必要はありません。プリペイドカードは小銭入れ感覚なだけに口座から現金を下ろしてプリペイドカードを購入するとか、スイカなどにチャージする手間がかかります。

 とすると、その手間の要らないデビットカードがいいのかというとそうでもありません。どうも財布に入っているお金は全部使ってしまうという習性のある私は、こずかい以外の資金も入っている口座を財布代わりに使う勇気はありません。やはり、手間はかけても資金をチャ-ジするほうが安心できます。「面倒だ」などと言ってはいけないようです。ところで、数年前に始まったJ-Debitはどのくらい普及しているのでしょうか。私はまだ数えるほどしか使った記憶がありません。ここ1~2年はまったく使っていないような気もします。恐らく、クレジットカードとプリペイドカードの中間の金額層がデビットカードの狙っていた利用金額帯なのでしょうが、スイカなどの利用店舗が増えていけば、そちらに食われてしまうように思います。もっともキャッシュカードのIC化で、キャッシュカードにプリペイドカードが乗っかるようなほうが使い勝手はいいのかもしれません。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2005.07.07

不良債権と金利

 銀行が経営再建中の企業の融資条件を緩和して再建を助けることはよくあることです。企業の返済を一定期間ストップして、資金繰りを楽にして本業に力を入れて立ち直れば、再び融資の返済ができます。このとき、当たり前の話ですが、返済をストップしている間は新規の融資はありえません。業況がおもわしくなくて、借りたものの返済を待ってもらっているのですから、これにさらに借金を重ねることは自分で自分の首を絞めるようなものであることは容易に理解ができます。

 返済をストップしても、元金のストップであって利息だけは払い続けることが一般的です。なぜなら、利息まで止めてしまうと利息分が元金部分に組み入れられますから、元金額が大きくなって膨れ上がっていきます。業況が回復しても途方もない借金が残っていては元も子もなくなってしまうからです。さらに、元金をストップするに当たっては融資利率を引き上げるのが筋というものです。引き上げるといっても支払う利息額が元金額ほどになっては意味がありませんから、そこまでは引き上げることはありえません。ただ企業の業況が改善しなければ将来的には返済は不可能になるわけですから、それだけ返済されない可能性の高い融資になっているといえます。すなわち不良債権です。

 不良債権は正常債権よりも高い率で貸倒引当金を積んで万が一の場合に備える必要があります。融資利率の引き上げ分は本来その高い率の貸倒引当金に充当するためのものです。

 不況の時には銀行はこのような企業支援をして、企業の立ち直りを促して景気回復につなげていくのですが、銀行事態の業況が悪いときには企業を応援できないこともでてきます。不良債権を出すと貸倒引当金を積んで銀行の利益が少なくなります。銀行自体の業況が悪化します。でも企業の業績が回復しないと銀行の回復もありえません。

 そこで、不良債権を出さずに企業の資金繰りを応援する方法が必要となります。それが融資金利の引き下げです。元金の返済はストップしませんが、利率を下げて支払利息を少なくして企業の資金繰りを応援します。元金をストップしたほうが企業は助かるのでしょうが、それができないために利息を少なくすることで企業と銀行が折り合いを付けたということになります。

 果たしてこの業況の悪化した先の金利を低くするというやり方は肯定されるのでしょうか。当然ですが、肯定されません。これは不良債権隠しです。不良債権隠しに基づいて銀行の財務諸表が作成されれば明らかに粉飾決算です。個別案件の金利は貸す方と借りる方の合意によって決まるもので、上がろうが下がろうが金融庁などの第三者が口を挟むことではありません。しかし不良債権隠しをやっているとなると話は別です。不良債権を一定以上に増やすと銀行が著しい不利益を蒙る会計ルールは、銀行の預金者や銀行の株主さらには銀行と取引をするあらゆる人々にとって必要であるから設けられたルールです。これを一企業を応援するために無視しては正常な経済活動に支障をきたす恐れがでてきます。

 金利を不当に低くして不良債権隠しをしているかどうかはどうやって見つけるのでしょうか。いまや貸出金利の平均は1.4%台と低水準です。優良企業に貸し出すために競争の結果低金利となったのか、不良債権化するのを恐れて低金利にしたのか、これは融資先の企業の業績を見て判断するしか今のところなさそうです。具体的には金融庁が検査に入って個別に調べなければ分からないということです。

 銀行の預金者や株主の立場にたつなら、自己責任を求められながら銀行の融資姿勢を判断する方法が、数年に一度程度の金融庁の検査を待つだけというのは甚だ心許ない気もします。不良債権額は公表されるようになって久しいのですが、これで十分とは到底言えないのではないでしょうか。銀行の内部で査定した格付けごとに融資先数、融資額、平均金利なども公表してもいいのではないかと思います。

 貸出金利は企業の業績だけで決まるものではなく、企業の従業員も含めた総合的な取引振りも勘案されるのでしょうが、格付けごとの貸し出し条件の推移が分かれば不良債権隠しの兆候は出てくることが期待されますし、何より銀行への牽制にもなるはずです。金利は低いだけがいいことではありません。調達した資金に4~5%の金利を支払ってもペイするだけの利益率の事業を育てることが必要なのだと思います。

 

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2005.06.22

無担保融資と投資

 みずほ銀行が機械設備を担保にした融資制度を創設するということです。(NIKKEI NET)動産担保登記制度ができるのにあわせた融資制度ですが、数年前に始まった売掛債権担保融資のことを思い出しました。保証協会もかなり力を入れていたように思いますが、その後どうなっているのでしょうか。

 中小企業庁の資料によりますと、最近は毎月2万件以上、金額で月に6,000億円以上実行しているようです。思ったより利用実績があるなと感心しました。これなら機械や設備を担保にした動産担保融資も中小企業に利用が見込まれるのではないかと期待が持てそうです。

 いろいろなモノが担保になって、資金調達の手段が増えることは中小企業の活性化につながり、いいことだと思います。ただ、担保の種類が増えると、無担保融資はますます少なくなるのだろうと考えられます。無担保で貸し出す金融機関は、その企業の取引先を見たり、技術力を信頼して貸し出す決断をするのだと思います。無担保融資を実行する時点では、取引先の売掛債権や技術力の元になる機械設備はまだ担保に入っていなかったとしても、その後に別の金融機関に担保に取られてしまっては、無担保で実行した金融機関の債権が危なくなるだけです。そうならとれる担保はとっておこうという考えになっても無理はありません。

 本来、中小企業に無担保で融資すること自体、もしかしたらかなりリスクの高い行為なのかもしれません。ならば、うまくいった時のリターンも高くなければ割に合わないのが道理です。こうなると、融資よりは投資のほうが馴染むように思えてきます。

 非上場でも期限付きで企業が買い戻せるような株式を発行できて、引き受ける金融機関があれば、投資という名の無担保融資も可能になるかもしれません。買い戻す際には、業績が良くなってその期間に上げた利益の半分くらいを配当として出してから買い戻せば出資者も利益になります。もちろん業績が上がらなければ、配当はなしで出資分が取り戻せるかどうかも分かりません。

 無担保融資はリスクは出資に近いものですから、大きなリターンが期待できなければどんなに優れた目利きが判断しようと、実行することは難しいものなのかもしれません。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2005.06.10

貸出金利の低下は好ましいことなのか?

 銀行の貸出金利が低下しているといいます。平均1.4%台ということです。預貸金の利鞘でも1.5%を下回っています。単純に言えば、預金は銀行の仕入れで、貸し出しは売上げと見ることができますから、仕入れと売上げの鞘が1.5%もないということです。粗利1.5%はかなり低い水準です。

 とはいえ、個々の取引で見れば貸し出した資金を預金で取り込んで、信用創造ということで顧客単価ではもっと高い利益率を確保していると思います。1億円を1.5%で借りて5千万円を当座預金に預けていれば、実質金利は3%です。A社が1.5%で1億円を借りてB社に支払い、B社はその内の5千万円を当座預金に預けていても、銀行にしてみれば総体として実質3%で貸し出していることと同じです。銀行にしてみれば、貸した金額を1銭も残さずに支払いに当ててしまうA社を、資金繰りの忙しい会社として警戒してみて、信用面で劣るとしていずれ金利の引き上げを交渉するかもしれません。実質金利はさらに上がる可能性があります。

 借金漬けの日本でもまだ信用力があるのが国債です。現在1.2%台の国債金利を下回るようならおかしな話ですが、需要と供給で今の1.5%を下回る利鞘になっているのなら問題はないはずです。しかし、3月頃の国債の金利は1.5%前後でした。銀行の利鞘が1.5%を下回るという数字は05年の3月期で見た統計です。ということは、すでに銀行は貸し出しで利益を上げるより、国債で運用したほうが儲かるから国債を購入し、その結果国債の価格が上がって利回りが今の1.2%程度に低下してきたということが言えるようです。

 競争原理はいいのですが、このまま放置すれば銀行は資金を企業に供給しなくなる恐れがあります。再び貸し渋りです。これ以上の貸出金利の低下は決して好ましいものではありません。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2005.03.12

金融商品の販売について(後)

 金融商品の販売について、「販売代理」から「購買代理」への変化は顧客ニーズを考えますと当然の変化ではありますが、販売の現場では結構難しいことです。というのは、今まで販売手数料目当てに売りまくっていた人間が顧客ニーズを踏まえて商品の組み合わせをコーディネイトしようとしてもなかなかうまくはいきません。デパートには化粧品、シャツ、ジャケット、スカートやズボン、靴と自分に合った身だしなみを整えようとすればほぼ全てといっていいほどのアイテムはそろっています。しかし、一人ひとりの顧客のニーズのためにトータルにコーディネイトしてくれるデパートの販売員はどれだけいるでしょうか。

 銀行においても同様で、ワンストップショップ化が進んで仮にあらゆる金融商品が銀行で購入できるようになったとしても、トータルにコーディネイトしてくれる銀行員は極めて少数なはずです。多くの銀行員がコーディネイターとして活躍できるほどの能力を持っていたなら、不良債権問題にしてももっと早くに解決していたはずです。そして、少数のコーディネイターは一般の顧客の前に出てくることはまずないはずです。100万円をコーディネイトするのも、1億円をコーディネイトするのも、その内容は違っていてもかける労力はほぼ同じです。顧客の属性を理解してそのニーズを把握して、その顧客にあった金融商品をチョイスする作業は、金額の大小にかかわらず同じ工程です。そうすると、当然に同じ手間なら報酬の高いほうを優先します。100万円から受け取る手数料よりも1億円から受け取る手数料のほうが高いので、そちらに少数のコーディネイターは注力することになります。

 これは当然のことで、金持ち優遇とかそういうことではなく、一般的な経済活動です。いいも悪いもありません。問題は、少数のコーディネイターになれないその他大勢の販売員たちです。今まで「販売代理」として金融商品を売りまくった人たちは、それはそれで銀行の収益増強に貢献してきたわけですから、銀行内でそう邪険にもできません。こういう人たちは、バブルの頃には貸すことが第一だと言われればとにかく貸しまくって、不良債権ができてBIS規制をクリアするためには貸し渋りだとなれば貸し渋りどころか貸し剥がしまでやってきた人たちです。銀行での取扱商品が増えるごとにその商品の増強運動キャンペーンなどがあると、「購買代理」などは無視して突っ走ります。今の銀行の責任ある地位にいる人の多くはこの類の人のはずです。

 大手銀行ほど、あるいは金融コングロマリットに近づけば近づくほど、金融商品の製造と販売が近づきます。グループ内に投信会社や生保を取り込めば、自分たちのグループ内で金融商品を作って売ることができます。顧客ニーズを踏まえて製造すればいいのですが、すべての人の全ての病気に効く薬がありえないように、どんなに優れた金融商品でも処方箋がなければその真の実力は発揮できません。一般論で考えて、自社グループ内で製造した製品と他社製品があった場合、どちらを優先して販売しようというインセンティブが起こるでしょうか。多分、自社に近い製品から売りたくなるでしょうし、優先的に売るよう支持されるでしょう。そして、販売員は「売って収益を上げよ」といわれれば喜んで売りまくる人たちです。さて、どのような事態が予想されるでしょうか。

 このような状況では「購買代理」を実行することは難しく、相変わらず「販売代理」の理論がまかり通るのではないでしょうか。「購買代理」が行われるには、販売員の能力向上が必要なのは当然ですが、大手の金融機関よりも地域に根ざした規模の小さい金融機関のほうが有利となる可能性があります。規模が小さいがゆえに金融コングロマリット化できず、当然ながら金融商品の製造過程に参入することはできません。売る製品が全て他社製品であれば、どの製品を優先するかは顧客ニーズに基づいた選択が可能となる余地が、大手金融機関よりも大きくなります。「販売代理」から「購買代理」への移行は、地方からもたらされる可能性があります。

 このような現状から、「購買代理」の実現はそう容易ではありません。でも、小さなところからでも、わずかな風穴を開けることが将来の大きな流れの元になります。顧客ニーズを的確に捉えそのニーズに応えるという、当たり前ながらも地道な活動の積み重ねが、いつしか大きな流れへとつながっていくはず、そう信じていたいと思っています。

 

| | Comments (0) | TrackBack (1)

2005.03.11

金融商品の販売について(前)

 先日、社労士生保マンInakkyさんから一月ほど前の私の記事について興味をもたれたとおっしゃっていただいたので、私自身の考えの整理を含めて取り上げてみたいと思います。

 先月、あるFP(ファイナンシャルプランナー)認定団体主催のシンポジウムでの講演で、金融商品の販売姿勢について非常に感銘を受けました。今、時代の趨勢として金融機関、特に銀行においてあらゆる金融商品を一ヶ所で購入できるようになるようになって来ています。いわゆるワンストップショップ化です。一般に私たちは、金融商品に対していろいろなニーズをもっているものです。典型的な例を考えてみますと、給料を受け取るための普通預金口座が必要ですし、そこから光熱費などの公共料金や買い物をしたクレジットカードの決済が行われます。当面必要ではない資金なら定期預金にすることもあります。家を購入すれば、銀行で住宅ローンを組みますし、火災保険や地震保険にも加入します。以前は、住宅ローンは銀行の窓口で手続きをする一方で火災保険は損害保険会社かその代理店での手続きでした。今は両方とも銀行の窓口でできます。銀行が損害保険会社の商品を販売できるようになったからです。

 住宅ローンは20年から30年におよぶ長い期間の借金です。住宅ローンを組むに当っては、人生の将来設計をもう一度考えるはずです。そのときに住宅と並ぶ大きな買い物といわれる生命保険も見直すいい機会でもあります。今はまだ一般の生命保険は銀行の窓口では扱っていませんが、ライフプランをたてるにあたっては住宅ローンと生命保険を別々に考えるよりは一緒に相談できれば便利です。

 ライフプランを考えると、これから20年から30年の住宅ローンがあるとはいっても、公的年金が当てにできない現状では老後資金のことも少しは気になります。預金金利は史上最低といわれてもう10年以上経ちますが、いまだに最低のままでいつ上がるかさえ見えてきません。月々のわずかな貯蓄を効率よく老後資金に当てられるだけの金額に増やそうと思えば、株や債券なども検討する必要がありそうです。証券会社は敷居が高くても、いつも使っている銀行で株や債券が購入できればいろいろ話しも聞き易いし、いいかもしれない。

 現実に、銀行では従来損害保険や生命保険、証券会社で扱っていた商品を既に販売しています。証券会社のみで扱っていた頃よりも、投資信託は大きく残高が増えています。そして投資信託の約半分は銀行で販売されています。生保の変額年金保険も同様です。

 とはいっても、銀行は自分でこういった金融商品をつくっているわけではありません。投資信託であれば投信会社が、変額保険であれば生保が作った商品を販売して販売手数料をもらっています。バブル後の落ち込んだ収益を立て直すには、他社が作った商品を販売して儲けることは効率のいい儲け方でした。作るコストがかからないだけに売れば売るだけ儲かる仕組みは、不良債権処理に追われた銀行には絶好の儲けるチャンスでした。儲けるために売りまくったわけです。投信会社や生保の代わりに金融商品を販売するいわゆる「販売代理」というビジネスモデルです。

 しかし、ここで状況は少し変わってきました。やみくもに「販売」だけすることには限界があるのです。お客様である銀行利用者は、働いて老後資金を作ることは難しく、お金を働かせなければ老後資金は作れない時代になったことを多くの人が自覚するようになりました。利用者のニーズは、金融商品を総合的に組み合わせて、資産を守り、殖やし、残すといったことを強く求めるようになったのです。このニーズを満たすためには、売り手側の「販売代理」では無理です。利用者の対面に位置する「販売代理」ではニーズを充足できません。利用者の横に来て、利用者にとって何が必要なのかを一緒に考えて、商品のチョイスを手伝う「購買代理」が求められるようになったわけです。

 大手銀行は、不良債権処理に目途をつけて金融商品のワンストップショップ化に加えて、金融商品の製造にも乗り出すところも出てきそうな気配もあります。信託はすでにほぼグループ分けがなされています。あとは生保、損保、証券会社を金融グループに取り込んであらゆる金融商品を取り扱う「金融コングロマリット」を形成しようという意図が見えてきています。アメリカのシティグループなどのような大規模な金融機関のイメージです。

 さて、金融コングロマリットは置いておいて、銀行における「販売代理」から「購買代理」という流れは間違いないものだと思いますが、果たしてその流れはスムースなのかどうか。本題はその点なのでしょうが、ちょっと長くなりそうなので、記事を改めたいと思います。後編に続くということで、今日はここまでにさせていただきます。

| | Comments (1) | TrackBack (1)

2005.03.09

公的信用保証の担い手拡大

 公的信用保証が、ノンバンクの融資にも適用できるよう信用保証の対象を拡大するようです。中小企業の融資の円滑化を目的とする信用保証協会の主旨から言えば、資金調達先の拡大は望ましいのでしょうが、どこまで利用されるかは見ものだなと思っています。

 恐らくは、中小企業融資においては銀行も信用保証協会付融資から組み込んでいるはずです。BIS規制からプロパー融資は相当に絞り込んだはずですから、中小企業の信用保証枠はあまり空いていないだろうと推測します。ここ1~2年はメガバンクを中心に、銀行も再び量を重視してきて無担保のビジネスローンなどでノンバンクのような融資をしてきましたから、ノンバンクにも信用保証協会を開放しようという発想かもしれません。悪いことではありませんが、今までのノンバンクの顧客は保証枠が一杯でしょうし、銀行の顧客を獲りにいっても、銀行との取引のみでノンバンクとの付き合いのない中小企業がノンバンクとの取引を始めることは、よほどのことがないと普通はやらないと思います。

 返済が進んで、信用保証協会枠が空いたところへノンバンクがタイミングよく飛び込んでみても、取引金融機関にノンバンクを加えるとは考えにくいのではないでしょうか。ノンバンクから融資を受ければ、いずれ既存の取引銀行にわかることですし、銀行がとっておこうと思っていた信用保証枠をノンバンクで使ったとなるとその後の銀行取引が心配になるはずです。

 ノンバンクに望みがあるとすると、保証割合を引き下げようとする動きがあることです。現状は100%保証ですから、1,000万円の融資が焦げ付けば1,000万円の弁済を銀行は信用保証協会から受けられます。これを90%とか80%に引き下げようということです。1,000万円の焦げ付きでも今までは銀行は実損はなかったわけですが、今後は100万円から200万円くらいの損失が出るかもしれないということです。こうなると、保証がつけば実行しようという融資については、銀行は慎重にならざるをえなくなります。今でも大手銀行が断った案件を、2番手以下の第二地銀や信用金庫が拾っていたりしますから、保証割合の引き下げでこういった2番手以下の銀行からもこぼれる案件が出てくればノンバンクの出番となるのでしょう。あるいは、第二地銀や信用金庫あたりですと競合する可能性もあるかもしれません。

 もう一つは私募債でしょうか。私募債をノンバンクが扱えるのかどうかは知りませんが、扱えるのであれば優良企業にも食い込める可能性が出てきます。私募債は確か、もともと90%の保証ですし、機能としては融資と変わらなくても社債ということでノンバンクを使うことに抵抗感は少ないと感じることもあります。ノンバンクには信託会社も入るそうですから、私募債を引き受けてジャンク債ファンドでも組成してくれればそれなりに意味もあって面白いと思います。
 

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2005.02.15

住宅ローン利用者は破産するのか

 2月4日の国会で住宅ローンが取り上げられました。変動金利型住宅ローンの金利上昇リスクを指摘して、900万世帯あるという変動金利型住宅ローンの利用者に金利上昇で破産者が続出する可能性があると指摘した国会議員がいます。民主党の小泉俊明氏ですが、よくわからないことがあります。900万世帯あるという変動金利型住宅ローンの利用者ですが、これは半年ごとに金利が変動する狭義の「変動金利型」をいうのでしょうか。それとも、3年固定、5年固定、10年固定などの「固定特約付変動金利型」も含むのでしょうか。

 狭義の住宅ローンであれば、半年ごとに金利は変わっても返済額が変るのは5年に1度で、返済額が上がっても25%増しまでです。民主党の小泉氏は金利が1%から4%に上がると返済額は50%以上上がって破産の危険があるというのですが、50%以上上がるには最長で10年の期間があります。それだけの期間があればその間に返済方法の変更などの手続きが可能ですし、金利が再び下がる可能性もあります。金利上昇と返済額の見直しが重なる人もいるでしょうが、それでもすぐに上がっても25%増しまでです。10年くらい前でしょうか、バブル崩壊後の高金利で未払い利息が問題になったことがありました。金利が上がっても5年ごとの返済額の見直し時期ではない限り返済金額は変えずに、元本の返済と利息の支払の割合を調整するのですが、あまりにも金利の上昇が急で毎月の支払のすべてが利息に充当されていくら払っても元本は減らない、しかも毎月利息だけ払っても発生する利息に足りずに未払い利息が発生すると言う事態が起こったことがありました。このときは、結局何もせずにそのままにしておいて、その後の金利低下によって解決していしまいました。あのあと、低金利が続いてくれたからいいのですが、今度未払い利息が発生するようなことになって、その後一時金利が低下しても未払い利息が解消する前にその次の金利上昇が始まるような事態がないとは言えません。このような事態を想定したルールはありませんので、問題はこの方が多分重大だと思います。

 さて、住宅ローン利用者が破産する可能性ですが、狭義の変動金利型よりも「固定特約付変動金利型」のほうが大変だと思います。特に3年以下くらいの短い固定期間の場合です。狭義の変動金利ですと、今はほとんどの銀行は2.375%です。固定特約付で3年固定ですと、みずほ銀行は2.25%、優遇条件に合えば、1.55%です。固定特約付には狭義の変動金利のような返済額が上がっても25%増しまでというルールはありません。2000万円を1.55%で期間20年で借りると、毎月の返済額は、96968円です。細かい計算は面倒なので、2000万円20年で金利を5%で計算すると、毎月の返済額は、131992円で、返済額は毎月約3万5千円、36%増加すると大雑把に計算できます。増加額は年間42万円ですから、まるまる1か月の収入分くらいがローン返済に消えることになります。これはきついでしょう。もし、住宅ローンの金利上昇で破産者が出るなら、金利上昇の程度にもよりますが、短めの固定特約の金利適用者で、特約期間が終了した人からということになると思います。ところで、この危険のある住宅ローン利用者は900万人のうちのどのくらいでしょうか。

 破産の危険があるのであれば、人数が多い少いなどというより何か対策が必要です。対策として、民主党の小泉氏は次の2点を挙げています。
 ①米国同様、銀行に金利上昇による支払いの増加を詳細に説明する法的義務を課すべき
 ②住宅金融公庫が支援する長期固定の証券化ローンの利用促進
この対策についても疑問があります。

 ①について、金利上昇の説明義務であれば、既に金融商品販売法で義務付けられています。恐らくは、「詳細に」というところが既存の義務との違いかもしれませんが、何をもって詳細と言うのでしょうか。先ほど私は金利上昇の例として、5%で計算しましたが、具体的な数字を示せばいいのでしょうか。しかし、実際にどの程度上昇するのかは誰もわかりません。将来の不確定なことを、具体的な数字で示すことを義務付けると、利用者に余計な先入観を与えることになり、5%を超えて金利が上昇した時に利用者の想定外だったということになりまかねません。実際には現状でも、金利上昇リスクを説明する際に銀行では例として具体的数字を使ったシュミレーションはしているかもしれませんが、義務付けるとなると余計な誤解のもとではないかと考えます。

 ②について、長期固定ローンの推進は、利用者の予定がたて易いという点と、証券化によって銀行が金利リスクを回避できるという点でいいとは思います。でも、利用者の利便性を考慮すると、固定特約付も重要です。中学生の子供がいる世帯では、中学生の子供が大学を卒業するまでは学費の予定を立てるために金利を固定させたいというニーズが考えられます。一般に固定期間が長いほど金利は高くなりますから、長期固定ローンよりは10年固定のほうが、顧客のニーズに合うということもあります。子供がもっと大きければ固定期間が7年や5年となって、低い金利での住宅ローンの利用が可能になります。子供が大学を卒業して独立すれば、学費に加えて生活費負担も減り住宅ローンの返済に回せる金額が増えたり、世帯主の定年退職による退職金での繰り上げ返済も考えられます。

 とはいっても、最近では銀行のほうが長期ローンを推進したいらしくて、金利をずいぶん下げています。みずほ銀行では、10年固定が3.5%で、長期固定が2.64%です。これなら言われなくても長期固定ローンが促進されるでしょう。ただ、これにも欠点はあって、ペイオフ対策には使えないという点があります。ペイオフ発動の際、預金者は保障されない預金を借り入れと相殺することができます。しかし、長期固定ローンは証券化するためにローン債権は住宅金融公庫に譲渡されてしまいます。こうなると預金とローンを相殺することができなくなるわけで、この点は長期固定ローンの欠点です。蛇足ですが、当然ながら金融商品販売法によって、こういった点も銀行は説明しなければなりません。

 民主党の小泉氏の論点は少々ずれているところもあるようですが、金利上昇リスクに備える必要があるという問題意識はその通りだと思います。私が思うに、返済額が急に増えた場合には住宅ローン利用者が破産しなくて済むよう、銀行が柔軟に返済方法の変更に応じられるような制度が必要です。企業が返済に困って返済方法の変更をすると、不良債権予備軍、破綻懸念先として銀行は引当金の積み増しが必要になりますが、住宅ローンの場合はそうならないようにすれば銀行も返済方法の変更に応じ易くなると思います。引当金についてはBIS規制などあって、日本国内だけでは決められないかもしれませんが、広い意味での変動金利の銀行ローンを長期固定ローンで長期に借り替えることを可能にするなど、代替となる方法はあるはずです。できることなら、このような観点から政策の検討を望みたいと思います。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2005.02.10

ローテクの使い道

 巣鴨信金のローテク偽造カード対策は、最初は笑えましたが、なかなか鋭いなと感心しています。今でも銀行の窓口に通帳と印鑑を持って普通預金を引き出す顧客層は存在して、その顧客層が主要な顧客であるならコストをかけてICカードなどを導入するよりよほど合理的です。

 日銀の統計によると、’04年9月の国内銀行の個人預金325兆円のうち46兆円は流動性預金で残高1000万円以上です。割合では約14%です。この預金はほとんどがペイオフ対策で普通預金に入れている資金ではないかと推測されます。ペイオフ対策で普通預金に入っている資金は、たいていはキャッシュカードで下ろすニーズはないと思います。同時にペイオフ対策が必要な資金であれば、銀行にとってもいろいろと提案できる資金です。4月以降ペイオフ完全解禁後は、一部が個人向け国債に流れても大部分は決済性預金に残るのではないかと思います。そうであれば4月以降も銀行がその資金の行方に関与できる余地が残ります。

 偽造カード対策に併せて、富裕層に銀行担当者を通さないと下ろせない決済性預金を作るということも考えられます。銀行の富裕層担当者が本人確認をして引き出せるという不便だけれども安全な預金です。不便な代わりに運用相談を同一の担当者に任せられるというメリットをつけてみてはどうかなと思いました。偽造カード対策という名目があれば、口座維持管理手数料として運用相談フィーも徴収できるかもしれません。
 
 もっとも、銀行員は転勤もあるし、富裕層顧客の財産管理に携わることができる人員がどれだけいるのか。結局は、今でもそうかもしれませんが、ペイオフ対策用の口座にはもともとキャッシュカードを発行せず、その面では安全なのだろうと思います。そして一部の意欲と能力のある銀行の担当者だけが、顧客の運用相談ニーズに応えているのだろうと想像できます。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2005.02.01

保険業界へも解禁見送り

 銀行の保険窓販解禁延期に続いて、保険会社の信託進出にも待ったがかけられているようです。昨年末に信託業法が改正されて、金融機関以外の企業も信託を取り扱えるようになったにもかかわらず、保険会社が信託を取り扱うための省令の改正がなされず、実質上保険会社の信託進出ができない状態となっています。日経新聞によると、生保業界は、銀行の保険窓販解禁が延期されたことが原因と見ているようです。

 銀行の保険窓販解禁延期は、銀行による圧力販売を防止する施策をしっかりたてることがその理由でした。保険会社が信託を扱って何か顧客の不利になることはあるのでしょうか。遺言信託などは保険会社が取り扱って、デメリットどころかたいへん有意義な商品開発が可能になるとさえ思えます。リバースモーゲージなども、中央三井信託が3月から保険会社を絡ませて取り扱いを始めますが、保険会社自体がそういった商品を保険会社ならではの視点で開発することも可能なはずです。

 業界の垣根をなくしていくのであれば、下手な駆け引きで規制を助長するようなマネは顧客にとっていいサービスを制約することであり、結局は自らの首を絞めるに等しいことを理解しなくてはなりません。銀行界が保険窓販解禁を急ぐのであれば、それに反対する保険業界に嫌がらせをするのではなく、しっかりとした圧力販売防止措置を組み立てるべきです。また、保険業界も自分たちの縄張りを守るという意識ではなく、顧客によりよいサービスを提供して選ばれる金融機関になることを目指して欲しいと期待します。

| | Comments (2) | TrackBack (1)